Letter

がん標的治療:MCT1による毒性分子の輸送は解糖機能亢進性腫瘍の効果的な標的治療法である

Nature Genetics 45, 1 doi: 10.1038/ng.2471

発がん性形質転換によって細胞の代謝プログラムが変更されるとする証拠は、増加の一途をたどっている。このような変更のうち高頻度で見つかるものは解糖機能の亢進であり、解糖酵素を標的としたがん治療法についての研究が熱心に進められている。本報告では、ハプロイド細胞におけるゲノムワイドな遺伝子スクリーニングを行い、抗がん剤候補の1つである3-ブロモピルビン酸(3-BrPA)に対して細胞を耐性とする機序を明らかにした。ここで、3-BrPAが呈する抗腫瘍効果の実体は解糖の阻害であるが、その作用機作はほとんど明らかになっていなかった。今回の遺伝子スクリーニングの結果、3-BrPA感受性を決定している主要因子が、SLC16A1の遺伝子産物であるMCT1であることが明らかになった。MCT1は、がん細胞による3-BrPAの取り込みに必要にして十分な因子であった。また、SLC16A1 mRNAの発現量から3-BrPA感受性を最も確実に予測でき、解糖が亢進しているがん細胞においてその発現量は最も高かった。さらに、3-BrPA耐性がん細胞においてMCT1を強制発現させ、腫瘍異種移植片での3-BrPA処理に対する感受性の変化を調べ、in vivoにおける感受性の増大を観察した。今回の研究成果は、3-BrPA感受性についての有望なバイオマーカーを同定したものであり、がん細胞で発現する種類のトランスポーターの特異性を利用して、毒性分子を腫瘍へと送達可能とするというコンセプトを実証したものである。

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