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エキノコックス:エキノコックスのゲノム
Nature Genetics 45, 10 doi: 10.1038/ng.2757
エキノコックス症(単包虫症あるいは包虫症ともいう)は、条虫のエキノコックス(Echinococcus granulosus)によって引き起こされるが、ヒトの有病率と死亡率の原因として占める割合は少なくなく、診断、治療、制御が困難な世界的に見られる疾患である。本論文では、この条虫の11,325個の遺伝子をコードする151.6 Mbからなる概要ゲノム配列を示す。他の分類群のゲノム配列との比較から、エキノコックスは、その産物がこの寄生虫から分泌されて、宿主の免疫応答と相互作用しそれを変化させるさまざまな遺伝子を獲得していることが分かった。その1例がEgAgBファミリーである。我々はまた、胆汁酸塩経路の遺伝子がエキノコックスの二方向性の発生を制御する可能性、および、カルシウムチャネルサブユニットのEgCavβ1の配列の差異がプラジカンテル感受性に関連する可能性も見いだした。我々の研究は、寄生虫における宿主相互作用、栄養獲得、片節形成、繁殖、免疫回避および成熟についての理解を深め、また、エキノコックス症の制御のための新規の有効な治療法や介入法の開発を進めるための基盤となるものである。