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神経発生:カドヘリンの受容体—リガンドのペアであるDCHS1およびFAT4をコードする遺伝子の変異は大脳皮質の形成を妨害する
Nature Genetics 45, 11 doi: 10.1038/ng.2765
哺乳類の大脳皮質形成においては、神経幹細胞が適切な制御を受けて増殖・分化し、新生神経細胞が皮質内を移動していくことが中核となる。皮質神経細胞の局在化異常の1つである脳室周囲神経細胞異所形成は、上記の形成過程から外れた神経前駆細胞に起因する可能性がある。本論文では、受容体とリガンドの組み合わせであるカドヘリンDCHS1およびFAT4をコードする遺伝子内に生じた変異が、脳室周囲神経細胞異所形成をはじめとするヒトの劣性遺伝性の症候群を引き起こすことを明らかにする。マウス胚の神経上皮においてDchs1もしくはFat4の発現を低下させると、神経前駆細胞の数が増加し、神経細胞へと分化する割合が減少した。その結果、神経細胞は大脳新皮質の層構造の下部にとどまり、異所的蓄積が見られるようになった。この観察は、上記のヒト疾患における所見と類似している。このような影響は、Hippoシグナル伝達経路の構成因子である転写エフェクター(アクチベーター)、Yapを同時にノックダウンすることで相殺された。今回得られた知見は、Dchs1およびFat4が、Yapよりも上流に位置する、哺乳類の神経細胞形成における重要な調節因子であることを示唆している。