ブタとイノシシの進化：家畜化されたブタとチベットイノシシにみられる選択の特徴的なパターンをゲノム解析により同定

雌のチベットイノシシ（Tibetan wild boar）のゲノムについて、131倍の深度で塩基配列決定を行い、新規にアセンブリングし、解析を行ったので報告する。また、6つの主要分布地由来のチベットイノシシ30頭と、地理的に関連性のある中国のブタ18頭について、全ゲノムを塩基配列再決定した。そして、遺伝的な多様性、集団の構造、進化のパターンについての特徴付けを行った。選択圧のかかったゲノム領域を探索したところ、低酸素や嗅覚、エネルギー代謝、薬剤応答に関連する遺伝子が含まれた。チベットイノシシと近縁の中国の家畜化されたブタのゲノムとを比較することにより、何千年間の人工的な選択の影響、そしてイノシシと家畜化されたブタとで選択によるゲノムの特徴が異なることが明らかになった。また、チベットイノシシが高い標高に関連した遺伝的適応をみせること、そして家畜化されたブタでの唾液分泌の増加についての遺伝的な基盤についても解析した。