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白血病:低二倍体の急性リンパ芽球性白血病のゲノムの全体像
Nature Genetics 45, 3 doi: 10.1038/ng.2532
低二倍体(hypodiploid)の急性リンパ芽球性白血病(ALL)は、異数性と転帰不良とを特徴とするALLのサブタイプで、その遺伝学的基盤は解明されていない。124例の低二倍体のALL症例のゲノムのプロファイリングを行い(症例40例についての全ゲノムおよびエキソーム塩基配列決定を含む)、2つのサブタイプを明らかにした。この2つは、異数性の重症度、転写プロファイル、超顕微鏡的な遺伝学的変化において異なっていた。24~31本の染色体を持つnear-haploid ALL(ほぼ半数体のALL)では、受容体型チロシンキナーゼシグナル伝達やRasシグナル伝達(71%)を標的とする変化や、リンパ系転写因子遺伝子IKZF3(AIOLOSをコードする)(13%)の変化がみられた。一方、32~39本の染色体を持つlow-hypodiploid ALL(低度低二倍体のALL)では、TP53(91.2%)、IKZF2(HELIOSをコードする)(53%)、RB1(41%)に変化がみられた(TP53の変化は非腫瘍細胞にもよくみられる)。near-haploid(ほぼ半数体)の白血病細胞も、low-hypodiploidの白血病細胞も、Rasシグナル伝達およびホスホイノシチド 3-キナーゼ(PI3K)シグナル伝達経路の活性化を示し、PI3K阻害剤に感受性であることから、これらの薬剤がこの侵攻性の強い型の白血病の新しい治療戦略として検討されるべきであることが示される。