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頭蓋骨癒合症:ERF量の低下はヒトおよびマウスにおける複雑性頭蓋骨癒合症を引き起こし、ERK1/2シグナル伝達を骨形成の調節に関連させる
Nature Genetics 45, 3 doi: 10.1038/ng.2539
Extracellular signal-related kinases 1 and 2(ERK1/2)は、RASの下流のマイトジェン活性化プロテインキナーゼシグナル伝達を仲介する主要なタンパク質である。つまり、ERK1/2はリン酸化されると核に移行し、多数の標的の調節を引き起こす。本論文では、ERF(ERK1/2に直接結合する抑制性ETS転写因子をコードする)量の低下が、ヒトおよびマウスにおいて複雑性頭蓋骨癒合症(頭蓋縫合の早期癒合)を引き起こすことを示す。この新たに認識された病気の特徴には、複数の骨縫合の癒合、頭蓋顔面の変形、キアリ奇形、言語発達遅滞が含まれる。機能的なErfレベルが正常の約30%に低下しているマウスは、出生後に複数の骨縫合の癒合を示すが、胎仔の頭蓋冠の発生には軽度の遅滞のみみられた。マウス胚性繊維芽細胞においてクロマチン免疫沈降とハイスループット配列決定を組み合わせて用いて、ERFがRUNXあるいはAP-1モチーフを含むプロモーターから離れた配列に優先的に結合することがわかった。この研究は、ERFが、おそらく多数の因子を含む転写複合体でETS因子の活性化と競合することで、RAS-ERKシグナル伝達による骨形成促進を調節する新しい因子であることを明らかにするものである。