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イネのミトコンドリア:ミトコンドリアと核の有害な相互作用はイネにおいて細胞質雄性不稔を引き起こす

Nature Genetics 45, 5 doi: 10.1038/ng.2570

植物の細胞質雄性不稔(CMS)は、細胞小器官ゲノムと核ゲノムの間の不和合性から生じ、自家受粉を防止することで、収穫量の増加を目的とした雑種作物育種を可能にする。野生発育不全型のWild Abortive CMS(CMS-WA)は、1970年代以降、「3系統型」ハイブリッド米産生の大部分に利用されているが、この形質の分子基盤は明らかになっていない。本論文では、新しいミトコンドリア遺伝子WA352(この遺伝子は進化上新しい野生イネに起源がある)にコードされるタンパク質が、核にコードされるミトコンドリアタンパク質COX11と相互作用することで、CMS-WAに寄与することを報告する。CMS-WA系統では、WA352は葯タペート組織に特異的に蓄積することで、過酸化物代謝におけるCOX11機能を抑制し、花粉成熟前のタペート組織のプログラム細胞死の引き金となり、結果として花粉退化を引き起こす。WA352によって引き起こされる不稔は2つの稔性回復(Rf)遺伝子によって抑制することが可能であるため、有害な細胞質因子の作用に拮抗する異なる機構の存在が示唆される。したがって、CMSに関連する細胞質-核の不和合性は、新たに進化したミトコンドリア遺伝子と保存された不可欠な核遺伝子との間の有害な相互作用によって駆動している。

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