Letter
ミンククジラ:ミンククジラゲノムとクジラ類の水中適応
Nature Genetics 46, 1 doi: 10.1038/ng.2835
クジラの陸生から水生生活への移行は、進化の過程における非常に大きな出来事である。今回、ミンククジラゲノムの全ゲノム塩基配列決定とde novoアセンブル(構築)について報告する。また、それに加えて、3つのヒゲクジラ類、ナガスクジラ、ハンドウイルカ、スナメリの全ゲノム塩基配列決定も行った。比較ゲノム解析によりストレス応答タンパク質と嫌気性代謝に関連する遺伝子ファミリーのクジラの系統での拡大を見いだした。一方で、体毛や感覚受容器に関連する遺伝子ファミリーは縮小していた。また、抗酸化物質をコードする遺伝子や、血圧や塩分濃度を調節する酵素をコードする遺伝子のクジラ特有の変異も同定した。このようにクジラゲノム配列は、酸素の不足や活性酸素種の量増加、高い塩分濃度による生理的ストレスへの耐性といった特徴を持つ水生環境での生活に必要な生理学的および形態学的な変化に伴う独特の特性を示しているといえる。