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エピジェネティクス:Dnmt3aにより維持されているDNA低メチル化状態の大保存領域

Nature Genetics 46, 1 doi: 10.1038/ng.2836

DNAのメチル化および脱メチル化は、哺乳類の細胞型ごとに異なる重要な特性である。DNAメチル化の状態を変化させ、細胞運命に変化をもたらす機序には、例えば悪性形質転換があるが、そうした機序について調べるため、マウスの精製造血幹細胞を用いて5-メチルシトシンや5-ヒドロキシメチルシトシンのゲノムワイドな位置決定を行った。その結果、メチル化のレベルが低い場所がある程度広がるゲノム領域(キャニオン)を見つけた。この領域は、転写因子をコードする遺伝子をしばしば含んだ保存された領域に広がっており、また、CpGアイランドおよびCpGアイランド周辺領域(ショア)とは別の領域であった。こうしたメチル化キャニオンに含まれる遺伝子のおよそ半分には、遺伝子発現抑制型のヒストン修飾が見られた。それに対して、残りの半分の遺伝子は発現活性化型のヒストン修飾を受け、造血幹細胞(HSC)において高発現していた。キャニオンの端(境界)は5-ヒドロキシメチルシトシンによって決定されるが、DNAメチルトランスフェラーゼ3a(Dnmt3a)が存在しない条件下ではこれが失われていた。また、キャニオンに存在する遺伝子には、ヒトの白血病において調節不全となっている遺伝子が多く含まれていた。今回新たに明らかになったエピジェネティックな修飾は、造血の一調節機構を示すものであり、白血病の発症の一因となる可能性がある。

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