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腫瘍遺伝学:CUX1を不活性化させる変異ががん化を促進する
Nature Genetics 46, 1 doi: 10.1038/ng.2846
腫瘍遺伝学における大きな課題の1つは、頻度の低い体細胞変異のうちのどれががん化を引き起こすかを決定することである。7,651個のヒトがんゲノムを調べた結果、種々のがんの約1~5 %において、ホメオドメイン転写因子であるCUX1(cut-like homeobox 1)に不活性型の変異が見られることが分かった。骨髄性悪性腫瘍2,519症例について、CUX1の変異状態に関するメタ解析を行った結果、変異による欠損が予後不良群と関連しており、CUX1の欠失が臨床的に重要であることが明らかとなった。さらに、マウスでのトランスポゾン変異導入とショウジョウバエのがんモデルにより、CUX1が真のがん抑制遺伝子であることを確認した。またCUX1の欠損は、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ(PI3K)を阻害するPIK3IP1(ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ相互作用タンパク質1)を直接的に転写抑制し、それによりPI3Kシグナルを活性化し、腫瘍の増殖とPI3K-AKTの抑制に対する感受性の増加をもたらすことを明らかにした。これらの補完的なアプローチにより、CUX1ががん化における普遍的なドライバーであることが分かるとともに、CUX1に変異を持つがんの治療戦略を発見できる可能性が示唆された。