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ミトコンドリア:MICU1の機能喪失型変異によりミトコンドリアのカルシウムシグナル伝達を変化させることが脳筋症の原因となる
Nature Genetics 46, 2 doi: 10.1038/ng.2851
ミトコンドリアへのCa2+の取り込みは、細胞の生死にとって重要である。生理的なCa2+シグナル伝達は好気的代謝を制御しており、病的なCa2+の負荷は細胞死を引き起こす。ミトコンドリアへのCa2+の取り込みは、ミトコンドリア内膜にあるCa2+ユニポータ複合体によって行われており、この複合体はCa2+選択的イオンチャンネルであるMCUとその調節因子であるMICU1からなる。近位ミオパチー、学習障害、進行性錐体外路運動障害を特徴とする症状を持つ患者においてMICU1遺伝子の変異を同定したので、ここに報告する。MICU1変異を持つ患者の繊維芽細胞において、細胞質のCa2+濃度が低い状態におけるアゴニスト誘導性ミトコンドリアのCa2+取り込みは上昇し、細胞質のCa2+シグナルは減弱した。MICU1欠失細胞において静止ミトコンドリア膜電位は変化がなかったが、ミトコンドリアネットワークは激しく断片化されていた。筋ジストロフィーとコア筋症の病態生理は、ミトコンドリアのCa2+調節異常であるが、MICU1欠失に関連する症状はミトコンドリアのCa2+シグナル伝達の欠失が主たる原因であり、このことはヒトにおけるミトコンドリアでのCa2+取り込みが重要な役割を果たしていることを示している。