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アメリカ鉤虫のゲノム解読:アメリカ鉤虫Necator americanusのゲノム

Nature Genetics 46, 3 doi: 10.1038/ng.2875

アメリカ鉤虫Necator americanusは、主に土壌伝播によってヒトに寄生する鉤虫である。成虫は小腸において吸血しながら生息し、その結果、鉄欠乏性貧血、栄養失調、小児の成長および発育の阻害、妊婦の重篤な病的状態および死亡を引き起こす。本論文では、アメリカ鉤虫N. americanusのゲノム(サイズは244 Mb、遺伝子数は19,151)の塩基配列決定およびアセンブリの結果について報告する。今回初めて明らかになった鉤虫のゲノム配列の特性解析から、固有宿主であるヒトへの侵入を組織化して果たす遺伝子群、吸血および発育に関わる遺伝子群、鉤虫駆除のための新たな薬剤標的となりうるタンパク質をコードしている遺伝子群が同定された。アメリカ鉤虫は、免疫賦活タンパク質を著しく、かつ他に例のないほど、多く含んでいた。こういったタンパク質の一部を炎症性疾患に対する治療に用いる可能性を明らかにする。また、タンパク質マイクロアレイを用いて、ポストゲノム研究において鉤虫のゲノム配列を利用した実例を示した。このゲノムは極めて有益な遺伝資源となり、ポストゲノムの基礎研究および応用研究に向けての現行努力を後押しする。例えば、鉤虫感染症およびヒトの免疫疾患に対する新たな治療法の開発の躍進が期待される。

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