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寄生虫:鞭虫2種のゲノム解析およびトランスクリプトーム解析から、宿主-寄生虫間の密接な相互作用を理解する分子的な手掛かりが得られる
Nature Genetics 46, 7 doi: 10.1038/ng.3010
鞭虫は、一般的な土壌伝播蠕虫で、ヒトに消耗性の慢性感染症を引き起こす。線形動物に属するこの鞭虫は、Caenorhabditis elegansとは遠縁で、大腸の上皮細胞に体の一部を差し込んで生息するという独特のニッチに適応している。本論文では、ヒト感染性のヒト鞭虫(Trichuris trichiura)およびマウス実験モデルのネズミ鞭虫(Trichuris muris)の全ゲノム配列を報告する。全トランスクリプトーム解析を基盤として、性別特異的あるいは生活環特異的に発現する多くの遺伝子を同定し、また、鞭虫とその近縁寄生虫のみに見られる独特の生物学的適応を伴う形態学的領域〔つまり、杆状帯(bacillary band)およびスチコソーム〕の転写の全体像を調べた。その結果、鞭虫を感染させたマウスのRNA配列解読データを用いて、慢性感染している盲腸での調節されたヘルパー1型T(TH1)細胞様の免疫応答について、これまでにないほど詳細に説明することができた。in silicoのスクリーニングから、鞭虫症に対する有望な新規薬剤標的が多数同定された。まとめると、これらのゲノムデータおよび関連する機能データは、慢性鞭虫感染を特徴付ける分子的な宿主-寄生虫相互作用の重要な情報を提供するものである。