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上咽頭がん:上咽頭がんのゲノム基盤

Nature Genetics 46, 8 doi: 10.1038/ng.3006

上咽頭がん(NPC)は発症に、人種および地域による高度な偏りが認められるが、その遺伝的基盤はほとんど解明されておらず、有効な治療法の開発が必要とされている。本論文では、全エクソーム塩基配列決定および高カバレッジでの標的塩基配列決定を行い、さらにSNPアレイ解析を行うことで、NPC患者128人に見つかった変異の全容を決定した。このような手法をとることで、特徴的な変異パターン(シグネチャー)と、高頻度で変異が生じている9種類の遺伝子が明らかになった。これらの遺伝子の多くは、今回初めてNPC発症への関与が判明したものである。そして発現解析を統合した解析により、クロマチン修飾、ERBB-PI3Kシグナル伝達、オートファジーの機構などの、いくつかの重要な細胞内過程および経路に影響を及ぼす遺伝的な変化が多く存在することが分かった。さらに機能解析を行ったところ、上記の変化がNPCの悪性表現型と関連することが生物学的に示唆された。またこういったゲノム変化から、多くの創薬ターゲット候補が明らかになった。今回の研究成果をまとめると、NPCの発症機序を包括的に理解し、その新たな治療法を検討するための分子基盤を明らかにしたものといえよう。

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