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コチョウラン:ヒメコチョウランのゲノム配列解読
Nature Genetics 47, 1 doi: 10.1038/ng.3149
ラン科の植物は、豪華な花とさまざまな生殖適応や生態適応で知られており、最も多様性に富んだ植物グループの1つである。今回我々は、熱帯の着生ランであるヒメコチョウランPhalaenopsis equestrisのゲノム配列を報告する。このランは、品種改良の際に原種としてよく用いられているものである。ヒメコチョウランはCAM代謝(ベンケイソウ型有機酸代謝)を行うが、本研究はCAM植物の初めてのゲノム配列解読である。今回アッセンブルしたゲノムには、タンパク質をコードする遺伝子が2万9431個含まれていると予測された。ゲノムのヘテロ接合性により、コンティグのアッセンブルが不十分になる可能生のある配列には、自家不和合性経路に関連する遺伝子が多く存在することが分かった。また、ラン特有の染色体の倍数化イベントは、ランのほとんどの分岐群が放散する前に起こっている証拠を見いだした。今回の研究結果から、P. equestrisにおけるCAM光合成の進化に遺伝子重複が貢献しているかもしれないことが示唆された。また、ランの花における高度に特化した形態に貢献した可能生のあるMADSボックスのクラスC/D、クラスBのAP3、クラスAGL6の遺伝子ファミリーに拡大と多様化が確認された。