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トランスポゾン:コンディショナルなpiggyBacトランスポゾンシステムを用いたマウスの遺伝学的スクリーニングにより同定された膵がんにおける腫瘍形成ネットワーク

Nature Genetics 47, 1 doi: 10.1038/ng.3164

本論文では、マウスにおけるコンディショナルなpiggyBacトランスポゾンシステムについて述べ、膵臓の挿入型変異誘発スクリーニングを行い、多数の新たながん関連遺伝子を見つけたので報告する。まず、膵臓がんモデルマウスにおいてがんの浸潤や転移を促し、ヒトの膵臓がん患者のリンパ節転位と相互に関連している発がん転写因子としてFoxp1を同定した。また、開いたクロマチン構造に挿入できるというpiggyBacの特性から、がんと関連した非コードDNAに対するゲノムワイドなスクリーニングが可能であり、Cdkn2acis調節領域の位置を正確に決定できた。さらに、病理組織学的に異なる腫瘍サブタイプを観察し、肝細胞がんに類似した膵がんにおけるFign挿入のような、形態変化に伴う遺伝的な変化を見つけた。今回の研究から遺伝学的スクリーニングが、変異が生じている頻度が高いヒトがん遺伝子の下流に位置する標的遺伝子のような、これ以外の方法ではがんゲノム解析からの同定が難しい、がんのドライバー因子の発見に威力を発揮することが実証された。piggyBacを用いたこの方法は、どのような組織条件下においても広く適用でき、複雑な遺伝的背景を有するがんに対する独自の実験アプローチとなる。

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