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膵がん:バーチャルなマイクロダイセクションによる膵管腺がんの腫瘍特異的および間質特異的なサブタイプの同定
Nature Genetics 47, 10 doi: 10.1038/ng.3398
膵管腺がん(PDAC)は、依然として5年生存率が4%という致死的な疾患である。PDACの極めて重要な特徴は間質の関与が非常に大きいことであり、このことにより、正確な腫瘍特異的分子情報の獲得が困難になっている。今回、PDACの遺伝子発現マイクロアレイデータの多様な集合に対して、ブラインド信号源分離(blind source separation)を適用することにより、情報獲得を試みた。多様なデータとは、原発腫瘍細胞、転移を起こした腫瘍細胞、正常細胞に由来する試料のデータである。腫瘍細胞、間質細胞、正常細胞における遺伝子発現をデジタル化して分離し、2種類の腫瘍サブタイプを同定し、確認することができた。そのうち、「基底細胞から発生したと考えられる(basal-like)」サブタイプは予後が悪く、basal-like型の膀胱がんおよび乳がんに分子レベルの特性がよく似ていた。さらに、予後徴候がまったく異なる「正常」間質サブタイプと「活性化型」間質サブタイプを明らかにした。上記の結果は、PDACの分子基盤についての新たな手掛かりとなり、テーラーメイド治療を行う際や、治療法の選択や実施タイミングが重要な意味を持つ臨床現場での判断に際して、有用であると考えられる。