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APOBECとがん:APOBEC3領域の生殖細胞系列バリアントが、がんリスクと腫瘍におけるAPOBECシグネチャーの集積と関連する
Nature Genetics 48, 11 doi: 10.1038/ng.3670
APOBECシグネチャー変異は多くの腫瘍で高い割合で見つかるが、この変異パターンに影響を与える因子の解明はあまり進んでいない。本論文では、APOBEC3領域の2つの高頻度生殖細胞系列バリアントの寄与について検討した。SNP rs1014971 は膀胱がん発症リスク、APOBEC3Bの発現上昇、膀胱腫瘍におけるAPOBECシグネチャー変異の集積と関連していた。これに対して、APOBEC3Bを除去しAPOBEC3A–APOBEC3Bキメラを作り出す30 kbの欠失は、膀胱がんには重要ではなかったが、乳がんのリスクや乳房腫瘍におけるAPOBECシグネチャーの集積に関連していた。さらにin vitro条件下で、膀胱がん細胞株におけるAPOBEC3Bの発現は主にDNA損傷薬処理によって誘導され、また、乳がん細胞株におけるAPOBEC3Aの発現は抗ウイルス性のインターフェロン誘導型免疫応答により誘導された。上記の結果は、生殖細胞系列のAPOBEC3リスクバリアントを有する患者における、発がんの引き金となる環境因子の組織特異的な役割を示すものである。