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母体血:胎児由来のDLK1は母体の妊娠への代謝適応に必要で、胎児の発育不全に関連する

Nature Genetics 48, 12 doi: 10.1038/ng.3699

妊娠中は代謝要求量が高まる。絶食は代謝を脂肪酸の酸化へと向かわせるが、この絶食応答は、妊娠してない女性よりも妊婦において、はるかに迅速に起こる。インプリントを受ける遺伝子であるDLK1(delta-like homolog 1)の産物は、内分泌型シグナル伝達分子で、妊娠後期の母体循環血中において高濃度に達する。Dlk1を欠失させたモデルマウスを用いて調べたところ、母体循環血中DLK1が胎児由来であることが明らかになった。胎児由来のDLK1を欠損させると、母体の絶食応答に異常が生じた。さらに、母体の血中DLK1濃度から、マウスの胚の大きさを予測でき、また、ヒトのコホートにおいて健康なSGA乳児(在胎別出生時体格基準値による比較で、体格が小さい乳児)と病的に小さい乳児とを識別することができた。従って母体血中DLK1濃度の測定は、DLK1の発現異常を伴うヒトの疾患の診断や、子宮内発育不全や妊娠合併症の発症の予測に有用な方法であると考えられる。

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