うどんこ病：うどんこ病菌の系統間の雑種形成は新たな農業作物種の病原体を生む

農業史の中では、生産物の多様化や収量の向上のために、多数の新しい作物種（倍数体または人為的雑種）が導入されてきた。しかし、こうした新作物が新たな病原体および病気の進化に対してどのような影響を与えたのかは、ほとんど知られていない。ライコムギはコムギとライムギとの人為的雑種であり、2001年まではうどんこ病の真菌病原体（Blumeria graminis）に対する抵抗性を有していた。我々は、複数の分化型を含めた46種類のうどんこ病分離株に関して、ゲノム配列決定および比較を行った。その結果、ライコムギおよびコムギで増殖するB. graminis f. sp. triticaleは、コムギうどんこ病菌（B. graminis f. sp. tritici）とライムギ特有のうどんこ病菌（B. graminis f. sp. secalis）との雑種であることが分かった。今回のデータは、異なる2種類の宿主に特化した2種類のうどんこ病菌の雑種が、その2種類の宿主から生まれた雑種植物種を侵す場合があることを示している。我々は、異なる種に特化したうどんこ病菌同士の雑種形成が、農業によって導入された新作物への適応の一機構であるという結論を得た。