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幹細胞:Piwiはポリコーム群タンパク質の発現を抑えることでショウジョウバエの生殖細胞系列幹細胞と卵形成を維持している

Nature Genetics 48, 3 doi: 10.1038/ng.3486

ショウジョウバエDrosophila melanogasterのPiwiタンパク質は、微小環境(ニッチ)と細胞自体のメカニズムの両方を制御して、生殖細胞系列幹細胞を維持しているが、これを可能にしている仕組みについては明らかになっていない。本論文ではPiwiが、生殖細胞系列幹細胞のニッチや幹細胞において、ポリコーム群タンパク質複合体であるPRC1やPRC2と相互作用することで、卵巣の生殖細胞系列幹細胞と卵形成を制御していることを報告する。Piwiは、卵巣およびin vitro条件下で、PRC2サブユニットのSu(z)12およびEscと物理的に相互作用していた。Piwi、PRC2の酵素サブユニットE(z)、27番リシンがトリメチル化されたヒストンH3(H3K27me3)、RNAポリメラーゼIIについて、野生型および変異型Piwiの卵巣でクロマチン共免疫沈降を行ったところ、Piwiが、ゲノム上のおよそ72か所の進化上保存されたDNAモチーフに結合すること、そしてPiwi結合部位以外の多数のゲノム部位へのPRC2結合や、H3K27のトリメチル化を阻害することが明らかになった。さらにPiwiは、PRC2の機能をおそらく抑制することで、卵巣でのRNAポリメラーゼII活性に影響を及ぼしていた。上記の結果から、Piwiは核質においてPRC2を捕捉することでPRC2結合を負に調節し、その結果、ゲノム上の多くの標的結合部位へのPRC2結合が減少し、卵形成期の転写に影響すると仮定した。

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