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がん幹細胞:Qki欠損によりエンドリソソームの分解が下方制御されて最適ではない環境で神経膠腫幹細胞の幹細胞性が維持される
Nature Genetics 49, 1 doi: 10.1038/ng.3711
がん幹細胞(CSC)を含む幹細胞は、幹細胞性を維持するためにニッチを必要とするが、浸潤の際にCSCがニッチ外の最適ではない環境で幹細胞性を維持する仕組みは明らかになっていない。生後に、マウスの神経幹細胞(NSC)においてPtenおよびTrp53を同時に欠失させると、NSCの脳室下帯(SVZ)ニッチでの増殖が引き起こされるが、SVZ外では幹細胞性は維持されない。今回我々は、QkiがNSCの幹細胞性の主要な調節因子であることを見いだした。Pten−/ −; Trp53−/−の背景でQkを欠失させると、NSCがSVZ外で幹細胞性を維持するのに役立った。このNes-CreERT2; QkL/L; PtenL/L; Trp53L/Lマウスは、神経膠芽腫を発症し、その浸透率は92%で、生存期間の中央値は105日であった。機構的には、Qkの欠失は、エンドリソソームによる分解を低下させて、自己複製の維持に不可欠な受容体を細胞膜上に増加させることで、ニッチ外でのリガンド量の低下に対処している。従って、Qkiの欠失によるエンドリソソームレベルの下方制御は、神経膠腫幹細胞(GSC)がニッチ外の最適ではない環境で幹細胞性を維持するのに役立っている。