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クロマチン:SMARCB1はBAF複合体が介在するエンハンサーやバイバレントプロモーターの広範な活性化に必要である
Nature Genetics 49, 11 doi: 10.1038/ng.3958
哺乳類SWI/SNF(mSWI/SNFあるいはBAF)複合体の撹乱は、ヒトがんの20%以上に関与しており、そのがんを引き起こす役割は、悪性ラブドイド腫瘍において最初に同定された。悪性ラブドイド腫瘍は、BAF複合体のコアサブユニットSMARCB1(BAF47)の両対立遺伝子性不活性化を特徴とする進行性の小児がんである。この撹乱が、腫瘍形成に関与する機構についてはほとんど理解されていない。本論文では、BAF47の欠損が、BAF複合体の組み立てや完全性には大きな変化を引き起こさないが、クロマチン上のBAF複合体を不安定化することを示す。BAF47欠損肉腫細胞株におけるBAF47の救済により、ゲノム規模でBAF複合体の占有の上昇が引き起こされ、広範なエンハンサー活性化や、バイバレントプロモーターでのポリコームが仲介する抑制の解除が促進された。mSWI/SNFには2種類の組み立てが存在するが、BAF複合体がエンハンサーを、PBAF複合体がプロモーターを調節することを実証し、それぞれの複合体はBAF47欠損の際に撹乱される機能が異なることが示唆された。我々の結果は、mSWI/SNFが介する遺伝子活性化における協調的な機構の存在を明らかにし、ヒトがんや発達障害を引き起こすために統合あるいは減弱される機能があることが突き止められた。