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鼻の発生:希少な筋ジストロフィーに関連するSMCHD1の変異は孤発性無鼻症やBosma無鼻小眼球症候群も引き起こすことがある
Nature Genetics 49, 2 doi: 10.1038/ng.3743
無鼻症、つまり鼻の欠損は、希少な奇形で、眼球の異常や生殖系の異常を伴うことが多いが、病因は分かっていない。無鼻症の40人の塩基配列決定から、発端者の84%は、SMCHD1のATPアーゼドメインを含む限定された領域にミスセンス変異を持つことが明らかになった。SMCHD1において、トランスに作用するエピジェネティックな機構に対する機能喪失型変異が起こると、顔面肩甲上腕型筋ジストロフィー2型(FSHD2)が引き起こされる。これらの異なる2つの疾患の間には、変異の共有と類似したDNA低メチル化パターンが見られた。ゼブラフィッシュにおいてCRISPR/Cas9によってsmchd1を変化させると、無鼻症に関連する表現型が生じた。無鼻症の発端者と対照におけるトランスクリプトームおよびタンパク質の解析から、SMCHD1のmRNAやタンパク質の量に差異はないが、頭蓋顔面のパターン形成に関連する遺伝子や経路において調節性の変化が明らかになった。従って、SMCHD1の変異が、頭蓋顔面の奇形や生殖障害から筋ジストロフィーまでの異なる表現型の範囲に寄与することから、少数の遺伝子が原因となる疾患で多面発現が引き起こされるのと同一の機構であると考えられる。