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神経行動学的表現型:ATXN1–CIC複合体の破壊がマウスとヒトにおいて一連の神経行動学的表現型を引き起こす
Nature Genetics 49, 4 doi: 10.1038/ng.3808
神経変性疾患の原因となる機能獲得型の遺伝子変異が存在するが、同じ遺伝子であっても機能喪失型の変異の場合には表現型が異なることがある。このような例として、CIC(capicua)と転写抑制因子複合体を形成するタンパク質であるアタキシン1(ATXN1)があるだろう。この複合体の機能獲得は神経変性をもたらすが、ATXN1–CICは生存に不可欠の遺伝子でもある。我々は、発生中の前脳におけるATXN–CIC複合体の機能の理解を試み、この複合体の喪失が、多動、学習や記憶の障害、皮質上層ニューロンの成熟や維持の異常を引き起こすことを見いだしたので報告する。また、視床下部や内側扁桃体でのCIC活性が社会的相互作用を調整することも分かった。マウス変異体でのこれらの神経行動学的特徴の研究から得た知見をもとに、CICのde novoのヘテロ接合性短縮型変異を持つ5人が、知的障害、注意欠陥多動障害(ADHD)、自閉症スペクトラムを含む、同様の臨床的特徴を共有することを突き止めた。我々の研究は、ATXN1–CIC複合体の喪失が一連の神経行動学的表現型を引き起こすことを実証するものである。