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ABL1遺伝子:ABL1の生殖細胞系列変異は先天性心疾患や骨格変形を特徴とする常染色体優性症候群の原因となる
Nature Genetics 49, 4 doi: 10.1038/ng.3815
ABL1は、がん原遺伝子の1つで、白血病細胞のフィラデルフィア染色体の融合遺伝子BCR-ABL1の一部分としてよく知られている。生殖細胞系列のABL1に生じた次世代に受け継がれる変化は、遺伝疾患と関連付けられていない。本論文では、ABL1の生殖細胞系列バリアントが、先天性心疾患、骨格異常、発育障害を特徴とする常染色体優性疾患と共分離することを報告する。バリアントc.734A>G(p.Tyr245Cys)が、de novoないしは疾患との共分離であることを5人の患者において見つけた(家系1〜3)。さらに、de novoのバリアントc.1066G>A(p.Ala356Thr)を別な患者1人(家系4)に見つけた。これら2つのバリアントに対応する変異型プラスミドコンストラクトをHEK293T細胞で過剰発現させたところ、チロシンリン酸化が上昇した。この結果は、p.Tyr245Cysおよびp.Ala356Thrの両方のアミノ酸置換によってABL1キナーゼ活性が亢進していることを示唆している。今回得られた臨床所見および実験結果は、これまでに報告されている、ヒトにおけるBCR-ABL選択的阻害薬の催奇作用やAbl1ノックアウトマウスにおける発育障害と相まって、ABL1が生物の発生過程で重要な役割を果たすことを示唆するものである。