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PTENがん抑制遺伝子:単一コピーのSleeping Beautyトランスポゾンによる変異誘発スクリーニングからPTENと協調する新しいがん抑制遺伝子が明らかになる
Nature Genetics 49, 5 doi: 10.1038/ng.3817
がんゲノムの塩基配列決定により膨大数の遺伝学的変化が同定されているが、それらの意義や相互作用を解釈するための補完的な手段が必要となっている。本論文では、Ptenと協調するがん抑制遺伝子の発見を目的として、マウス全身への挿入変異誘発スクリーニング手法を新たに開発したので報告する。この目的を達成するため、不活化を引き起こす単一コピーのSleeping Beautyトランスポゾンの動員と、同一ゲノム内のPtenの破壊を連動させるという工夫を行った。転位によって誘発される前立腺、乳腺および皮膚の278の腫瘍の解析から、がんに関与する既知および候補の遺伝子についての組織特異的なデータセットおよび組織共通のデータセットが明らかになった。我々のスクリーニングにより、ZBTB20、CELF2、PARD3、AKAP13、WACが複数のがん種で同定されたが、これらは、前立腺がんの新しいがん抑制遺伝子であることを確認した。これらの遺伝子とPTENとの相乗作用により、in vitroでの浸潤が防止されることを明らかにし、その臨床的意義を確認した。さらにin vivoでのWacの特徴付けから、Pten欠損の状況では、この遺伝子(オートファジー調節因子をコードする)がobligate haploinsufficiency(絶対ハプロ不全)を示すことが分かった。我々の研究から、異なる種類のがんにおいてPTENと協調する複雑ながん抑制遺伝子ネットワークが明らかになった。これらの結果が臨床に貢献することが期待される。