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顆粒球分化:クロマチンリモデリング因子SMARCD2は好中性顆粒球の分化を制御する転写ネットワークを調節する
Nature Genetics 49, 5 doi: 10.1038/ng.3833
SMARCD2(SWI/SNF-related, matrix-associated, actin-dependent regulator of chromatin, subfamily D, member 2)、別名BAF60b(BRG1/Brahma-associated factor 60b)が、ヒト、マウス、ゼブラフィッシュにおいて骨髄系分化の非常に重要な調節因子であることを明らかにしたので報告する。好中球減少症、特殊顆粒欠損、過剰な芽球を伴う骨髄異形成、そして、さまざまな発達異常を特徴とする血縁関係のない3家系の患者を対象にした研究により、SMARCD2のホモ接合性機能喪失変異を3つ明らかにした。モデル系としてマウスとセブラフィッシュを用いることで、SMARCD2が骨髄系–赤血球系の前駆細胞の分化の初期段階を制御していることを明らかにした。in vitroでは、SMARCD2は転写因子CEBPεと相互作用して、特殊顆粒に貯蔵される好中球タンパク質の発現を制御していた。急性骨髄性白血病(AML)のヒト前骨髄球細胞においては、SMARCD2の発現がない場合に、転写とクロマチンの変化が引き起こされた。総合的にみて、SMARCD2は骨髄造血を制御する重要な因子であり、また、白血病におけるがん抑制遺伝子の可能性があることが分かった。