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妊娠高血圧腎症:胎児ゲノムのFLT1近傍の複数のバリアントは妊娠高血圧腎症のリスクに関連する
Nature Genetics 49, 8 doi: 10.1038/ng.3895
妊娠高血圧腎症は、妊娠の約5%に見られ、母体死亡および周産期死亡の主な原因である。妊娠高血圧腎症の原因は解明されていないが、感受性が遺伝的に受け継がれる証拠は得られている。しかし、ゲノムワイド関連研究(GWAS)からは、母親のゲノムについて、ゲノムワイドな有意水準でしかも独立したデータセットで再現性のある配列バリアントは同定されていない。本論文では、妊娠高血圧腎症の見られる妊娠で生まれた子のGWASを初めて行い、症例4,380例と対照310,238例において、ゲノムワイドな有意水準で初めて感受性座位を発見したことを報告する(rs4769613、P=5.4×10−11)。この座位はFlt-1(Fms-like tyrosine kinase 1)をコードするFLT1遺伝子の近傍にあることから、このタンパク質の胎盤アイソフォーム(sFlt-1)としての生物学的な役割が妊娠高血圧腎症の病因に関与することが示された。この関連は、妊娠高血圧腎症を妊娠後期に発症した妊娠で生まれた子や、出生時体重が10パーセンタイル値を超える子において最も強力であった。近傍のもう1つのバリアント(rs12050029)は、rs4769613とは独立に妊娠高血圧腎症と関連した。今回新たに発見された座位は、妊娠高血圧腎症の病態生理学的性質やそのサブタイプの理解を深める可能性がある。