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アトピー性疾患:重症のアトピー性疾患に見つかるCARD11のハイポモルフ型生殖細胞系列変異
Nature Genetics 49, 8 doi: 10.1038/ng.3898
一般的なアレルギー性疾患で重篤な症状を引き起こすものが、単一遺伝子疾患であることはほとんどない。本論文では、炎症を伴うことも伴わないこともある、重症アトピー性皮膚炎患者のコホートを対象に次世代塩基配列決定を行い、4つの家系に由来する8人に、これまで判明していなかったヘテロ接合性のCARD11変異を見つけた。ここで、CARD11はリンパ球受容体シグナル伝達に関係する足場タンパク質をコードしている。これらの患者の大部分では、症状が徐々に改善した。変異型CARD11の発現プラスミドをT細胞株に遺伝子導入したところ、抗原受容体に誘導されるNF-κB(核内因子κB)およびmTORC1(哺乳類ラパマイシン標的タンパク質複合体Ⅰ)の活性化の喪失と、活性化に対する優性阻害効果の両方が観察された。変異型CARD11を有する患者のT細胞は、これとよく似た異常と、さらにサイトカインであるインターフェロンγ(IFN-γ)の産生量の低下を示した。mTORC1およびIFN-γ産生の異常は、CARD11のT細胞への移入に必須なグルタミンを補充すると部分的に回復した。今回得られた知見は、CARD11に生じたハイポモルフ型の単一変異は、細胞機能異常を引き起こしてアトピー性皮膚炎の原因となるが、その病態は治癒する可能性が高いことを示している。