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スーパーエンハンサー:神経芽細胞腫はスーパーエンハンサー関連の2つの分化状態から構成される
Nature Genetics 49, 8 doi: 10.1038/ng.3899
神経芽細胞腫をはじめとする小児腫瘍には遺伝子変異があまり見られないため、エピジェネティックな調節に関心が集まっている。いくつかの種類の腫瘍には、異なる細胞系譜の発生段階に類似した、表現型の異なる細胞が含まれている。スーパーエンハンサー関連の転写因子(TF)ネットワークが細胞系譜のアイデンティティの基礎であると提案されているが、これらのエンハンサーの腫瘍内不均一性における役割は分かっていない。本論文では、ほとんどの神経芽細胞腫には、異なる遺伝子発現プロファイルを持つ2種類の腫瘍細胞が含まれていることを示す。未分化な間葉細胞と、運命決定されたアドレナリン作動性細胞は、相互に転換可能であり、別な細胞系譜の分化段階の細胞との類似性を備えている。同系の間葉細胞とアドレナリン作動性細胞の対についてのChIP–seqから、個々のスーパーエンハンサーの特徴と、各細胞種のスーパーエンハンサー関連TFネットワークが突き止められた。間葉のTFであるPRRX1の発現は、アドレナリン作動性細胞のスーパーエンハンサーやmRNAの全体像を間葉細胞状態に向かって再プログラム化できた。in vitroで確認したところ、間葉細胞の方が化学療法に抵抗性で、かつ、治療後の腫瘍や再発腫瘍において豊富に存在していた。スーパーエンハンサー関連の2つのTFネットワークは、おそらく正常発生において細胞系譜の制御に影響し、従って、神経芽細胞腫のエピジェネティックな制御を支配し、また、腫瘍内不均一性を形作っていると考えられる。