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白血病:高リスクの小児T細胞性急性リンパ芽球性白血病において繰り返し認められるSPI1(PU.1)融合遺伝子
Nature Genetics 49, 8 doi: 10.1038/ng.3900
治療低抗性ないし再発を来した小児T細胞性急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の予後は極めて不良であるが、その遺伝学的基盤については十分に分かっていない。本論文では、トランスクリプトームシークエンスおよび標的捕捉シークエンスを用いて、小児T-ALL 121例の包括的プロファイリングを行い、SPI1が関与する新しい遺伝子融合(STMN1-SPI1およびTCF7-SPI1)が複数の症例で生じていることを突き止めたので報告する。SPI1遺伝子(PU.1タンパク質をコードする)が関与する融合遺伝子を有する症例は、今回検討した小児T-ALL症例の3.9%(7/181)に認められ、CD4/CD8ダブルネガティブ(DN、CD4−CD8−)あるいはCD8+シングルポジティブ(SP)の表現型を示し、その全生存率はおしなべて不良であった。これらの症例は、T細胞への初期分化やT細胞アイデンティティの確立、またβ選択後の成熟過程などに関与する一連の遺伝子の発現の観点から、また、遺伝子変異プロファイルの観点から、既知の小児T-ALLサブセットと区別されるサブセットとなっている。融合タンパク質はPU.1転写活性を保持しており、マウスの幹細胞/幹細胞前駆細胞において恒常的に発現させたところ、細胞増殖を誘導し、T細胞分化の阻害を引き起こした。我々の知見は、高リスク小児T-ALLにおいてSPI1融合遺伝子が果たす独特な役割を浮き彫りにしている。