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白血病:小児および若年成人のT細胞系列急性リンパ芽球性白血病のゲノム基盤
Nature Genetics 49, 8 doi: 10.1038/ng.3909
NOTCH1シグナル伝達およびT細胞転写因子を活性化させる遺伝的変化は、INK4/ARF腫瘍抑制因子の不活性化とともに、T細胞系列急性リンパ芽球性白血病(T-ALL)の代表的な特徴であるが、大規模T-ALLコホートを対象とした詳細なゲノムワイド塩基配列決定はこれまで行われていない。264人のT-ALL患者の統合ゲノム解析を行い、106のドライバー遺伝子を推定した。その半分は、小児T-ALLにおいて今回初めて報告された(例えば、CCND3、CTCF、MYB、SMARCA4、ZFP36L2、MYCN)。我々は、コード領域および非コード領域の遺伝的変化を生じさせる新たな機序を示し、変化が頻発する10の生物学的経路を明らかにする。そして同時に、変異が生じた遺伝子および経路と、T-ALLの分化段階やサブタイプとの関連を示す。例えば、NRAS/FLT3変異は未成熟T-ALL、JAK3/STAT5B変異はHOXA1発現異常型ALL、PTPN2変異はTLX1発現異常型T-ALL、PIK3R1/PTEN変異はTAL1発現異常型ALLに、それぞれ関連を示した。このことは、それぞれのシグナル伝達経路が細胞の成熟段階に応じて別の機能を果たしていることを示唆している。こういったゲノム基盤に関する知見をもとに、正確な遺伝的モデルの作成や新たな治療アプローチの創出のための論理的枠組みが構築できると期待される。