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多能性:PRDM15はWNTおよびMAPK–ERKシグナル伝達の転写調節を行うことでナイーブ型の多能性を保護している
Nature Genetics 49, 9 doi: 10.1038/ng.3922
LIF、WNTおよびMAPK–ERKの下流で機能する転写ネットワークは、マウスの胚性幹細胞(ESC)をナイーブ状態で安定化するが、その特徴が非常によく研究されている。しかし、これらの3つのシグナル伝達経路を調節する上流の因子については、ほとんど解明されていない。PRDM(PR-domain-containing protein)はジンクフィンガー型の配列特異的クロマチン因子で、胚発生や細胞運命決定に不可欠な役割を担っている。本論文では、転写調節因子PRDM15の特徴を明らかにする。PRDM15はPRDM14とは独立に作用して、マウスESCのナイーブ状態を調節した。機構としては、PRDM15は、Rspo1(R-スポンジン1)およびSpry1(Sprouty1)の発現を直接促進することで、WNTおよびMAPK–ERKシグナル伝達を調節した。これらの知見と一致して、Rspo1およびSpry1のプロモーターのPRDM15結合部位をCRISPR–Cas9により破壊すると、これらの遺伝子の局所的クロマチン構成および転写調節の両方においてPRDM15除去と同様の効果が再現された。総合的に我々の知見から、PRDM15が、WNTおよびMAPK–ERKシグナル伝達の上流の調節因子の転写を調整することで、ナイーブ型の多能性が失われないように保護するクロマチン因子として不可欠な役割を担っていることが明らかになった。