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休眠遺伝子:複数の科の農作物に見られる栽培化の過程で生じた休眠遺伝子の平行選択

Nature Genetics 50, 10 doi: 10.1038/s41588-018-0229-2

栽培化された種は、表現型においてしばしば収斂進化を示す。この現象は栽培化症候群と呼ばれ、その表現型の1つに種子休眠性の消失がある。しかし、異なる科にまたがって平行栽培化に寄与した休眠遺伝子はこれまで報告されていない。我々は、古くから知られている緑色マメ遺伝子であるG遺伝子をダイズからクローニングし、G遺伝子が種子休眠を制御することを見いだした。また、ダイズの栽培化の過程でG遺伝子の選択が生じたことを示す結果を得た。さらに、イネおよびトマトにおいても、G遺伝子のオルソログが栽培化の過程で選択された形跡を認めた。形質転換植物の分析を行ったところ、G遺伝子のオルソログがダイズ、イネ、シロイヌナズナにおいて種子休眠を制御する機能を維持していることが確かめられた。また機能解析により、Gタンパク質がアブシジン酸の合成に関わる酵素であるNCED3およびPSYと相互作用し、それによりアブシジン酸合成を調節して種子休眠に影響を与えることが示された。すなわち我々は、複数の科にわたる農作物において平行選択の対象となった、種子休眠を担う遺伝子を同定したことになる。本論文の知見は新たな農作物の栽培化において役立つものと考えられる。

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