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長鎖ノンコーディングRNA:長鎖ノンコーディングRNAであるMALAT1は乳がんの転移を抑える
Nature Genetics 50, 12 doi: 10.1038/s41588-018-0252-3
MALAT1はこれまで、転移を促進する長鎖ノンコーディングRNA(lncRNA)であると考えられてきた。しかしながら我々は、トランスジェニック乳がんマウスモデルにおいて、Malat1遺伝子の不活性化が近傍の遺伝子の発現を変化させずに乳がんの肺転移を促進すること、そしてこの表現型が、Malat1を遺伝的に再び発現させることによって元に戻ることを見いだした。また、ヒト乳がん細胞においてもMALAT1遺伝子のノックアウトによって転移能の高まりが観察され、その表現型はマウスMalat1遺伝子の再発現によって元に戻った。一方、Malat1を過剰発現すると、トランスジェニック、自家移植、異種移植のいずれのモデル系においても、乳がんの転移が抑えられた。分子機構としては、MALAT1 lncRNAは転移促進を引き起こす転写因子であるTEADに結合してこれを不活性化し、結果的にTEADは、そのコアクチベーターYAPおよび標的遺伝子のプロモーター領域に結合できなくなることが分かった。さらに、MALAT1の発現量は、乳がんのプログレッションおよび転移能とは逆相関していた。上記の知見は、MALAT1が乳がんの転移促進因子というよりもむしろ転移を抑制するlncRNAであることを示しており、この種間保存度が極めて高く発現量も非常に多いlncRNAのこれまでの生理機能モデルは再検討する必要があるだろう。