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体軸:繊毛が駆動する脳脊髄液の流れは、神経ペプチドのウロテンシンの発現をもたらし、それにより脊椎動物の体軸をまっすぐにする
Nature Genetics 50, 12 doi: 10.1038/s41588-018-0260-3
体軸をまっすぐにすることは、脊椎動物胚に典型的な頭尾の形を発生させる重要な形態形成事象である。体軸がまっすぐにならないという異常は、脊椎の3次元的な湾曲を特徴とする特発性側弯症などの衰弱性疾患につながることがある。異常な脳脊髄液(CSF)の流れは特発性側弯症の発症に関与することが報告されているが、CSFの流れの下流で機能する分子機構は解明されていない。本研究では、ゼブラフィッシュ胚において、繊毛が駆動するCSFの流れが、CSFと接触する脊髄に沿ったニューロンにアドレナリン作動性シグナルを輸送し、神経ペプチドのウロテンシンを誘導することを示す。ウロテンシンは、背側の体節の遅筋繊維上のウロテンシン受容体を活性化する。これらの筋繊維の収縮が、体軸をまっすぐにすると考えられる。これと一致して、ウロテンシン受容体に変異が起こると、ゼブラフィッシュ成体に重度の脊柱側弯が引き起こされて、これはヒトの疾患をよく模倣していた。これらの知見から、CSFの流れの異常が引き起こすウロテンシンシグナル伝達の破壊が、特発性側弯症の病態の基礎となる重要な病因であり得ると示唆された。