Article

前立腺がん:SREBP依存性脂質合成系に異常が生じると前立腺がんの転移が促進される

Nature Genetics 50, 2 doi: 10.1038/s41588-017-0027-2

脂質は、細胞内で合成されたものであろうと、細胞外から取り込まれたものであろうと、ヒトのがんと関連があるとされている。今回、転移性のヒト前立腺がん(CaP)において、PMLがしばしば、PTENと同時に欠失していることを見つけた。マウス前立腺のPmlの不活性化を誘導すると、進行が遅いPtenヌル欠失変異型腫瘍が致死性の転移性前立腺がんへと変化することを明らかにした。また、PmlPtenの二重ヌル変異型転移性CaPの重要な特性として、MAPKが再活性化されていること、この異常な再活性化に続いて、SREBP依存性である転移促進性脂質合成系が高度に活性化されていること、そしてリピドームのプロファイルが特有であることを明らかにした。さらに、SREBPをファトスタチンによってin vivo条件下で標的阻害すると、腫瘍成長および遠隔転移が阻止された。重要なことに、高脂肪食(HFD)によって前立腺腫瘍で脂肪蓄積が生じ、非転移性のPtenヌル変異型CaPモデルマウスに転移が十分に引き起こされた。また、ヒト転移性CaPにSREBPのシグネチャーが現れていた。従って、今回得られた知見は、転移を促進する脂質合成系の実体を明らかにし、また、欧米型のHFDが転移を促進するとの見解に対する、遺伝学的解析および実験による直接的な裏付けとなる。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度