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コアラゲノム:コアラゲノムの解読から得られた適応と種の保全に関する知見
Nature Genetics 50, 8 doi: 10.1038/s41588-018-0153-5
有袋類コアラ科の唯一の現存種であるコアラは、生息地の喪失と疾患の蔓延のために「絶滅危惧II類」に分類されている。我々は今回、コアラゲノムの塩基配列を決定したので報告する。これは、セントロメアを含む完全かつ連続的な有袋類の参照ゲノム配列となるものである。ユーカリの葉を解毒できるコアラの能力は、シトクロムP450遺伝子ファミリーの拡大によってもたらされた可能性がある。また、コアラは植物の二次代謝物の匂いや味を感じて適切な食物選択をすることができるが、これは鋤鼻受容体および味覚受容体の遺伝子ファミリーの拡大による可能性がある。他にも、育児嚢内の幼獣を保護するために使われる新規な乳タンパク質や、クラミジア疾患に応答する重要な免疫関連遺伝子を同定した。ゲノムワイドな個体群動態解析によって、オーストラリアの大型動物相の減少の歴史に対応したコアラ個体数の激減が示された。現在の個体群はいくつかの生物地理学的境界を有しており、人為的に導入された個体群の影響による近親交配が増加していた。野生のコアラの保全に向けて必要な緑の回廊の設置や導入計画の策定を行うべき、遺伝的に分化した個体群を同定した。