Analysis
がん:ゲノム重複が進行がんの進化と転帰を方向付ける
Nature Genetics 50, 8 doi: 10.1038/s41588-018-0165-1
ゲノムの倍化という異常はがんに見られる顕著な特徴であるが、がんの進化と転帰に及ぼすその影響はよく分かっていない。本研究では、あらかじめ塩基配列決定が行われていた進行がん患者9692人のうち30%近くの腫瘍組織に、全ゲノム重複(WGD)を見いだした。WGDは、腫瘍の細胞系列および分子レベルのサブタイプによって多様であり、またWGDは、先行する形質転換ドライバー変異に続き、発がん過程の早期に起きていた。WGDとTP53変異の間には関連が認められたが、WGDの46%は野生型のTP53を有する腫瘍で起きていた。後者の場合、WGDはE2F介在性G1期停止の異常と関連していた。しかし、いずれの異常もWGDを起こした腫瘍に必ず見られるとは限らなかった。がんのタイプによってWGDに違いがあることは、がん細胞の増殖速度の違いによって部分的には説明できる。KRAS変異を有する大腸がん、エストロゲン受容体陽性乳がんなど、さまざまなタイプのがんについて、WGDは確立されている臨床的予後予測因子とは独立した予後不良の予測因子であった。WGDはがんで極めて一般的に見られ、さまざまなタイプのがんにおいて予後不良に関連するマクロ進化学的事象であると結論付けられる。