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小児脳腫瘍:小児脳腫瘍の起源で見られる膠着した発生プログラム
Nature Genetics 51, 12 doi: 10.1038/s41588-019-0531-7
小児期の脳腫瘍は、出生前に起源があると考えられている。我々は脆弱な発生状態を特定するために、胚の橋と前脳(2つの主な腫瘍発生部位)から得た6万5000個以上の細胞について、一細胞トランスクリプトームアトラスを作成した。191の異なる細胞集団のシグネチャーを導き出し、領域の違いによる細胞の多様性と分化動態を明らかにした。バルクの腫瘍トランスクリプトームをこのデータセットに当てはめると、WNT髄芽腫は菱脳唇に由来する苔状繊維ニューロンの細胞系譜に対応づけられ、多層性ロゼットを有する胎児性腫瘍はニューロンの細胞系譜を完全に反復していた。一方でグループ2a/bの非定型奇形腫様/ラブドイド腫瘍は、神経外胚葉以外に起源を持つ可能性が明らかになった。また、一細胞の腫瘍プロファイルが、対応する正常な細胞系譜の転写プログラムを反映する高度に定義づけられた細胞階層性を示すことは重要である。我々の知見は、特定の神経前駆細胞で起きる分化異常が、これらの小児がんの根底にある共通の機構であることを明らかにし、将来的なモデル化や治療介入に対するときの合理的な考え方の土台を提供するものである。