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コムギ:コムギゲノムのエキソーム塩基配列決定により、近縁野生種からの遺伝子移入が適応度地形の形成に果たしてきた役割の重要性が明らかとなる
Nature Genetics 51, 5 doi: 10.1038/s41588-019-0382-2
遺伝子移入は、有益な遺伝的多様性を生じさせる潜在的な要因である。しかしながら、コムギが全世界に広がる過程で、遺伝子移入が適応進化や品種改良に果たしてきた役割についてはよく分かっていない。本研究では六倍体および四倍体のさまざまなコムギ890アクセッションについて標的塩基配列再決定を行い、近縁野生種からの遺伝子移入を検出した。遺伝子移入、および品種改良や環境適応で生じた選択は、いずれも有害対立遺伝子による負荷を軽減させた。遺伝子移入は、ゲノム全域ならびに農学的に重要な遺伝子を含む領域において、ゲノムの多様性を増加させ、表現型の多様性のかなりの割合を説明する対立遺伝子の生成に寄与していた。これらの結果から、現代のパンコムギの適応的な表現型の多様性には、過去に起きた近縁野生種からの遺伝子流動が大きく貢献してきたことが示唆された。