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病院関連感染:Clostridium difficileの種分化中に見られる宿主伝播サイクルの適応
Nature Genetics 51, 9 doi: 10.1038/s41588-019-0478-8
細菌の種分化は、遺伝子型および表現型の特性が分かれることによって分岐するという進化過程を基本とする。しかし、遺伝的適応に影響を及ぼす選択圧や、それと新しい菌種の形成の根拠となる生物学的変化との関係については、よく分かっていない。本研究では、芽胞を形成する医療関連腸管病原性細菌Clostridium difficileが活発な種分化を行っていることを明らかにする。906菌株の大規模なゲノム解析を通じて、進行中の種分化過程が、新たに形成されつつある菌種のコア遺伝子群に対する正の選択に関係していることを示す。正の選択を受けているコア遺伝子群は、芽胞形成および単糖類の代謝に関与していた。機能の検証により、新しいC. difficile種は耐性のより強い芽胞を形成し、また、グルコースまたはフルクトースが代謝に利用できる場合には芽胞形成能および宿主への定着能が上昇することが分かった。すなわち、我々が報告する新興のC. difficile種は、単糖類の代謝と耐性レベルの高い芽胞の形成について選択を受けており、病院関連伝播に関して適応している。