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リンゴ:ハプロタイプを区別した二倍体ゲノムアセンブリーとパンゲノムがリンゴの栽培化の遺伝的歴史に新たな知見を提供
Nature Genetics 52, 12 doi: 10.1038/s41588-020-00723-9
リンゴの栽培化は、主に種間交雑により推進されてきた。本研究で我々は、栽培リンゴ(Malus domestica cv. Gala)と、その主要な野生祖先種2種(M. sieversiiとM. sylvestris)のハプロタイプを区別したゲノムを報告する。各ゲノムの2つのハプロタイプ間には大きな多様性が認められた。祖先ゲノムの推定を行ったところ、Galaゲノムの約23%が祖先種2種の両方の対立遺伝子を持つ雑種起源であった。91のアクセッションについて高深度の塩基配列決定を行ったところ、栽培リンゴ中に、2種の祖先種のいずれかに由来し、栽培化に関わる重要な形質に関連する複数の選択的一掃を認めた。リンゴのパンゲノムを構築・解析することにより、数千の新たな遺伝子が見つかり、そのうち数百は祖先種から選択されて栽培リンゴに広く定着したものであることから、新たな遺伝子または対立遺伝子の遺伝子侵入が、交雑を介したリンゴの栽培化の特徴の1つであることが明らかとなった。また、栽培リンゴGalaの13の発生段階についてトランスクリプトームのプロファイリングを行ったところ、全遺伝子の約19%は対立遺伝子特異的に発現することが明らかとなり、その中には果実の質に関連する遺伝子が多数含まれていた。