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転写調節:CTCFは免疫細胞の分化転換に必須ではないが、急性炎症応答の促進を行う

Nature Genetics 52, 7 doi: 10.1038/s41588-020-0643-0

ゲノムの三次元構成は転写調節に重要である。哺乳類では、CTCFとコヒーシン複合体は、クロマチンの内部で接触頻度が上昇した1メガ塩基以下の構造を形成しており、この構造をトポロジカルドメイン(TAD)と呼ぶ。TADは転写調節に関与し得るが、CTCFあるいはコヒーシン複合体を破壊してTAD構成を除去しても、生じる遺伝子発現の変化はわずかである。一方、CTCFは、細胞周期の調節、胚発生、成体のさまざまな細胞タイプの形成に必須である。本論文では、細胞状態の移行におけるCTCFの役割と、細胞の増殖に対するCTCFの役割とを切り離して理解するために、ヒト白血病B細胞を最小限の細胞分裂でマクロファージに変換する際のCTCF除去の影響を調べた。その結果、CTCFを除去すると、TAD構成は破壊されたが、細胞の分化転換は障害されないことが分かった。一方、CTCF除去下で誘導されたマクロファージは、エンドトキシン曝露後に見られる炎症遺伝子の上昇が完全には起こらなかった。我々の結果から、CTCF依存性のゲノムトポロジーは、厳密に言うと、細胞運命の機能的な変換に必要ではないが、外部刺激に対する迅速かつ効率的な応答を促進することが示された。

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