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腎疾患:マウスでの多発性嚢胞腎の回復から明らかになった腎臓の可塑性
Nature Genetics 53, 12 doi: 10.1038/s41588-021-00946-4
常染色体優性多発性嚢胞腎(ADPKD)における嚢胞形成は、体細胞での「2ヒット」変異により、尿細管細胞においてPKD1またはPKD2がヌル変異になると開始される。その後の嚢胞化の進行によって、尿細管細胞の形態、増殖、分泌の変化を通じて器官が再構築される。そして腎臓に炎症と繊維症が起こる。今回我々は、どちらかのPkd遺伝子を成体で不活性化し、その後、その遺伝子を再活性化できるマウスモデルを構築した。我々はこのモデルを用いて、Pkd遺伝子を嚢胞腎で再発現させることで、ADPKDの急速な回復が起こることを示す。Pkdの再発現によって、嚢胞細胞の増殖は低減し、オートファジーは活性化され、扁平上皮様細胞に裏打ちされた拡張した管腔を持つ嚢胞性尿細管は、立方上皮細胞に裏打ちされた正常な管腔に戻る。また、炎症の増加、細胞外マトリックスの沈着、筋繊維芽細胞の活性化が回復し、腎臓は小さくなる。我々は、ADPKD表現型の特徴は可逆的で、腎臓には可塑性に対してこれまで知られていなかった能力があり、少なくともその一部はADPKD遺伝子機能によって制御されていると結論付ける。