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クロマチン構造:ショウジョウバエ背腹パターン形成中のクロマチンコンホメーションと遺伝子調節の独立性
Nature Genetics 53, 4 doi: 10.1038/s41588-021-00799-x
クロマチン組織化と遺伝子調節の間の関係は、いまだよく分かっていない。クロマチンドメインやドメイン境界の破壊は、発生遺伝子の誤発現を引き起こし得るが、ゲノム組織化の調節因子を急性的に除去しても、遺伝子発現には比較的小さな影響しか及ぼさない。従って、遺伝子発現とクロマチン状態は、クロマチン組織化を引き起こす原因となるのか、また、クロマチン組織化の変化は、細胞タイプ特異的な遺伝子発現の活性化を促すのかどうかはよく分かっていない。今回我々は、キイロショウジョウバエ(Drosophila melanogaster)胚の背腹パターン形成をモデル系として用い、クロマチン組織化と背腹遺伝子の発現が独立している証拠を示す。我々は、単一細胞RNA-seqを用いて組織特異的エンハンサーを明らかにし、それらを発現パターンと結び付けた。驚いたことに、組織特異的なクロマチン状態と遺伝子発現であるにもかかわらず、クロマチン組織化の大部分は、いろいろな組織で維持されていた。我々の結果は、組織特異的なクロマチンコンホメーションは、組織特異的な遺伝子発現には必要でないが、エンハンサーが活性化されたときに、遺伝子発現を促進する足場として働くことを示している。