Article

小児がん:第一世代の小児がん遺伝子依存性マップ

Nature Genetics 53, 4 doi: 10.1038/s41588-021-00819-w

成人のがんは腫瘍変異量が多く、CRISPRを用いたスクリーニングにより有望な治療標的が発見されてきている。一方、変異が著しく少ないことが知られている小児がんでは、薬物標的となり得るタンパク質をコードしている遺伝子を、機能ゲノミクス的アプローチによって見つけられるかどうかが重要な問題となっている。この問題を解決するために、我々は小児における13種類の固形がんおよび脳腫瘍を対象として、第一世代の小児がん遺伝子依存性マップを作成した。82の小児がん細胞株について、ゲノムスケールでCRISPR–Cas9による機能喪失スクリーニングを実施し、細胞の生存に必要な遺伝子を特定した。小児がんでは体細胞変異が少ないという知見とは対照的に、小児がん細胞株では成人のがんと同様の複雑な遺伝子依存性が認められた。小児がんの遺伝子依存性マップから得られる情報は、現在進められている精密医療の臨床試験を支援する前臨床データとなる。小児がんで認められた脆弱性遺伝子は成人のがんとは異なるものが多く、成人のがんに対する治療薬の利用のみでは、小児がんの治療には不十分であることが示唆される。

目次へ戻る

プライバシーマーク制度