発生/エピジェネティクス:マウス着床前胚におけるH2AK119ub1とH3K27me3の動態および機能の差異
Nature Genetics 53, 4 doi: 10.1038/s41588-021-00821-2
ポリコーム抑制複合体1および2(PRC1/2)はそれぞれ、ヒストンH2Aの119番目のリシンのモノユビキチン化(H2AK119ub1)およびヒストンH3の27番目のリシンのトリメチル化(H3K27me3)の形成を主に触媒することによって、発生遺伝子の転写サイレンシングを維持する。哺乳類の着床前の発生過程において、ポリコームドメインが再プログラム化される仕組みについてはほとんど明らかになっていない。今回我々は、配偶子においてH2AK119ub1とH3K27me3は密に共局在しているにもかかわらず、受精後に異なる再プログラム化動態を経ることを示す。H3K27me3は、胚盤胞期まで母親由来に偏った数千のドメインで維持されている。一方、H2AK119ub1は、接合子では母親由来に偏っているが、2細胞期ではほぼ等しく分布するようになる。特に、母親由来のPRC2を除去した場合、初期胚における全体的なH2AK119ub1には限られた影響しか見られないが、XistをはじめとするH3K27me3インプリンティング座位での対立遺伝子性H2AK119ub1は低下を示した。一方、接合子においてH2AK119ub1の急性的除去は、少なくとも4細胞期までは、H3K27me3のインプリンティングの維持に影響を及ぼさなかった。H2AK119ub1の喪失は、接合子ゲノム活性化(ZGA)の際に発生遺伝子の早期活性化を引き起こし、その後、胚発生を停止させたが、H3K27me3の喪失ではこのような結果は引き起こされなかったことは重要である。従って、我々の研究から、マウスの着床前胚におけるH3K27me3とH2AK119ub1の動態と機能の相違が明らかになった。