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白血病:骨髄性白血病に選択的に依存する因子として、LINE-1レトロトランスポゾンのサイレンシングを発見
Nature Genetics 53, 5 doi: 10.1038/s41588-021-00829-8
転位性遺伝因子の1つであるトランスポゾンは、遺伝的多様性とゲノム進化において主要な役割を担っている。レトロトランスポゾンであるLINE-1(long interspersed element-1;別名L1)の異常な活性化は、ヒトがんにおいて一般的に見られるが、それが腫瘍タイプ特異的にどのような機能を持つかはほとんど明らかになっていない。今回我々は、エピジェネティックな調節因子を中心としたCRISPRスクリーニングによって、急性骨髄性白血病(AML)に選択的に依存する因子として、ヒトサイレンシングハブ(HUSH)複合体の構成要素であるMPHOSPH8/MPP8を見いだした。MPP8は定常状態の造血には重要ではないが、MPP8が喪失すると、L1が再活性化され、それによりDNA損傷応答と細胞周期からの脱出が誘導され、その結果AMLの発症が抑制される。内因性あるいは異所性のL1を活性化すると、MPP8喪失の表現型が模倣される。一方、レトロ転位を阻止すると、MPP8欠損によって誘導される表現型が消失する。AML発がん性変異の発現はL1抑制を促進する。また、L1サイレンシングの増強はヒトAMLの予後不良と関連する。従って、レトロトランスポゾンは一般的にがんを促進する機能を持つと認識されているが、我々は、骨髄性白血病におけるL1レトロトランスポゾンの腫瘍抑制の役割について報告する。